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「……なんでしょうか?」
「チンコのピアスを先生に嵌め直してほしいんだ」
男は真面目な顔でそう言った。
――は?
チンコのピアスを嵌め直せだと?
「性器ピアスは取った瞬間から塞がり始める。もう、嵌められないかもしれない」
男は物憂げな様子で俯くと、すっと瞼を閉じた。その横顔に憂いと哀愁が滲み、背後に美しい花々が見えた。タイトルをつけるならシチリア島の午後だ。
――なんだこれは? わざとか、この野郎。
一瞬、殴ってやろうかと思った。こっちはぐちゃぐちゃに挫滅した脚を練乳だけのエネルギーで治したんだぞ。そのくそみたいなピアスを外して。
「いいですか。あのピアスはERが責任を持って処分しました。どうか諦めて下さい」
「諦める……」
「タトゥーやピアスといった文化を否定するわけではありませんが、医師として言わせて頂くなら、性器のピアスは不衛生な上に感染のリスクがあり、非常に危険です。装着時もそうですし、性行為中もピアスでお互いの粘膜に傷がつくため、性感染症のリスクが高まります。これを機会にやめることをお勧めします。もちろん伊武さんの体のことを考えてのアドバイスです」
「…………」
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