【2】セカンドコール

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「高良先生、特別室の伊武(いぶ)さんがお呼びです」  朝の病棟回診を終えた所で看護師から声を掛けられた。伊武というのは昨日オペしたヤクザの名前だ。 「あれ、さっき診たけど」 「なんかお話があるそうです」  看護師は言いにくそうな顔でそれだけ告げるとすぐにその場からいなくなった。なんだろう。疑問に思いながら外科病棟の最上階にある特別室まで向かった。  ノックしてスライド式のドアを開ける。中に入るとベッドの上に伊武が寝ていて、その傍に子分と思われるヤクザが二人いた。一人はヤクザの期待を裏切らないジャージに金のネックレス姿で名付けるなら子分Aという感じの男だった。もう一人はそれより少し位の高そうな男で、黒いマオカラーのスーツに金色の時計とリムレスの眼鏡をしていた。インテリヤクザといった雰囲気だ。  伊武は病院着のため遠目には患者Aにしか見えないが、肩幅の広さと端正な顔立ちが術後の患者の雰囲気を見事に打ち消していた。看護師の水名が言うように彫りの深い、輪郭のはっきりとしたイケメンのようだ。ベッドの上にいても海外ドラマに出てくる弁護士や検事のような存在感があり、同時にヤクザ的な鋭さや色艶もきちんと持ち合わせている。  単純に絵になる男だなと思った。
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