【2】セカンドコール

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「どうかされましたか?」  伊武に声を掛ける。それで朝の回診時と部屋の中が変わっていることに気づいた。ベッドの周囲に色とりどりの花が飾られ、クマや猫のぬいぐるみまで置いてある。ひょうたん型のケースはバイオリンか何かだろうか。周囲に甘い匂いが広がり、生花に囲まれた男はもはや天国にいる様相だ。これが自分なら死んだんじゃないかと思うほどだ。 「田中と松岡、悪いが席を外してくれるか?」  伊武が低い声でそう言うと子分の二人はすぐに部屋を出た。広い特別室で二人きりになる。他の医師もいた回診時と違い、なんだか気まずい。 「先生が助けてくれたんだな。礼を言う。ありがとう」  伊武は畏まった様子で頭を下げた。 「それが仕事なので。あの、どうかされましたか? 痛みが酷いなら痛み止めの量を調節しますよ」 「先生……」  男にじっと見つめられる。なんの含みもない真っ直ぐな視線とぶつかる。ヤクザのくせにそんな素直な顔をするんだなと思った。 「先生は可愛いな」 「は?」 「本当に可愛い……」 「え?」 「いや――」  男は口元に手を当てるとコホンと咳払いをした。 「先生に一つお願いがある」
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