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キズナが、自分以外のひとと遊んだり他のひとの家に泊まったりすると、私は嫉妬した。
「どうして、簡単に男のひとと出来るわけ?」
あいかわらず、私は彼女を責めた。
「どうでもいいじゃん、ミズキちゃんに関係ないでしょ」
キズナはバイトで疲れているのか、私の部屋の床に転がり、自分の携帯の画面ばかりを見つめながら、面倒くさそうに答える。
「セックスに依存してるの?」
「そんなことない。男のひとは、乱暴だから、嫌だよ」
キズナは私の言葉に苛立ちを見せ、スマホの画面から目をそらして私の顔を見た。彼女のショートヘアが乱れている。私は、キズナが自分の方に気が向いたことを喜んだ。
「じゃあ、セックスは必要ないよね。なのに、どうして昨日はバイトだったのにうちに来なかったの?」
「だって、しょうがないじゃん。ミズキちゃんとは、そういうこと出来ないもん」
「できないこと、ないでしょ」
「いやだ、私、ミズキちゃんに嫌われたくないし」
キズナは駄々をこねるように言う。
「私はミズキちゃんにそばにいてほしい。ミズキちゃんみたいなひと、憧れる」
キズナは膝をついてゆっくり、ゆっくり私に近づいてきた。私は彼女を迎え入れ、いつもみたいに、両手でキズナの両頬をつかむ。肉厚で心地よい感触が、その中身を想像させる。垂れた瞳が、こちらを見つめてる。
「私さ、もう男のひとと付き合いたくないんだ。ほんとうは女の子が好きなのかも」
その言葉を聞いて、私はいてもたってもいられなくなり、キズナに口づけをした。
低反発。表面の乾きは、頻繁に直す安物のリップのせいだろう。ゆっくりと唇を離してしまうと、私たちは正面から見つめ合った。
キズナは何も言わなかった。私の行動に対して、許容も拒絶もしなかった。ただ無傷のまま、私の顔を見ている。そのせいで、私は後に引けなくなった。
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