第一章 劇的な別れと思わぬ始まり

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 何がどうして、こうなったんだろう。 「ふうん。半年も付き合ってたのに、別れちゃったんだ」  ミツキさんの唇が、緩りと動いて言葉を紡ぐ。俺は、小さく縮こまって首を上下に振った。 「は、はい……あの、性格の、不一致って言うか、その……」  そして、何とか言葉を捻り出す。  一体全体どうした事か、何故か、俺は、彼、ミツキさんと一緒に飲む事になっていた。本当に、よく分からないが、何故かそうなっていたのだ。 「勿体無い。うん、まあ、でも、あの子、可愛くない子だったから、良いんじゃない?」  その言葉にびっくりして顔を上げる。思わず、まじまじ、ミツキさんの顔を見てしまった。ミツキさんは俺の視線に気付いたのか、俺を振り返り、にっこりと笑った。 「あの子、可愛くなかったでしょ?」 「あ、はい……」  思わず頷いていた。  そうだ、可愛く、なかった。最初の頃は、本当に可愛い子だなと思っていたけど、性格が分かって来るに従って、どうしても可愛いと思えなくなっていたのだ。でも、性格が可愛くないと言っても、顔は可愛くて、仕草も、コケティッシュで。身体も、本当に理想的な体型で。  そこで、ふと気が付いて、あああ、と今更ながら思う。ユウトの最後の言葉だ。俺は、店中の人間に早漏だと思われているに違いない。いや、確かに、早いけど。事実だけど。それを知られるのと指摘されるのは、何て言うか、もう、もう……しょうがないんだけど。  俺が悶絶していると、からん、と音がした。ミツキさんの飲む果実酒の氷が溶けた音だった。琥珀色の果実酒は、ミツキさんにぴったりだ。甘さと言い、香りと言い、雰囲気と言い。ミツキさんは、宙を見上げると、ふうん、と鼻に掛かった声を出した。甘い声だな、と思う。ミツキさんにぴったりの声だ。 「そうすると、ナオ君は、今、フリーって事か」 「はあ、まあ……」  当然の事を言われても、俺は曖昧な返事しか出来なかった。  フリー、と言えば、確かにそうだ。だけど、この半年だって、フリーと言えなくも無かった。ユウトは、幾ら、何度、俺がお願いしても、俺一人には絞ってくれなかったのだから。
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