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「どうぞ、入って」  招き入れられた瞬間、声を上げなかった自分を、正直、褒めてやりたい。 「好きな所に座っていて。今、ココアでも入れるから」  促され、恐る恐る足を踏み入れる。ああ、すごい。夢の国みたいだ。俺は感動で打ち震えていた。  ミツキさんの住むマンションは、1DKと小ざっぱりした間取りだったが、その広さは俺の部屋とは比べるまでも無い。そして、何より、玄関を抜けて部屋に入った途端現れた可愛い物尽くしに、俺は、ただただ圧倒された。  随所に置かれたウサギの置物や縫いぐるみ、ラグやティッシュケースも勿論可愛いかったが、何と言っても素敵だったのは、その色使いだった。パステルカラーのカーテンやソファーカバー、テーブルクロスやチェアカバー、他にも沢山の愛くるしい物で彩られていて、俺は、ただただ呆然と立ち尽くすしか無かった。ああ、この部屋で暮らしたい!! 「ナオ。座っていて、って言ったのに、いつまで立っているつもり?」  ミツキさんに声を掛けられるまで、俺は本当に立ち尽くしていたらしい。慌てて謝ろうとして、思い留まる。ミツキさんは、俺がむやみやたらに謝るのを良しとしないのだ。 「あの、えっと、」 「うん? 何?」  にこにこと笑い掛けられて、俺は、これを言っても良いのか、暫し悩んだ。 「あの、……可愛い、部屋、ですね!」  口にした後、気持ち悪がられないだろうか、と不安になる。いや、大丈夫な筈だ。一般的な男子は、この部屋を見たら、そう感じる筈だ。多分。 恐らくは。
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