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「ふふ、ありがとう」
そう言って、ミツキさんが、この部屋で笑うだけで、もう、何て言うか、可愛いの暴力だった。はうあ、と意味不明な叫び声が俺の口からは漏れていた。ああ、写真撮りたい!! 俺の可愛いコレクションに是非追加させて欲しい!!
ば、と思わずスマートフォンを取り出す。すると、ミツキさんが、がし、と俺の腕を掴んだ。
「とりあえず、座ろうか?」
可愛い笑顔な筈なのに、気圧されてしまって、俺は小さく頷いた。不安を感じながらも、薄い緑のカバーが掛かったソファーに手を置く。ああ、本当に、俺なんかが座って良いのだろうか?
「良いから、座る!」
「は、はい!」
俺の迷いが分かったのか、ミツキさんが、ぴしり、と言う。その声は、驚く程鋭くて、俺は驚いてソファーに腰を落としてしまっていた。あ、座ってしまった! けど、思ったよりも硬い! ああ、でも、可愛い!!
「はい、ナオはココアね」
「あ、ありがとうございます」
ウサギの絵の描かれたマグカップを手に握らされ、思わず受け取ってしまう。急いでお礼を言ったら、ミツキさんは器用にも、右の眉尻を少し下げた。
「熱いから、ちゃんと冷まして飲むんだよ」
「はい!」
ココアの熱さが指先からじんわりと伝わって来て、俺は自分が随分冷えていた事に、今更気付いた。今日は、ちょっと薄着をし過ぎたかもしれない。 昼間は暖かくなると天気予報で言っていたので、一枚羽織る物を持って来るのを怠ったのだ。
「あ、美味しい」
ココアは、甘くて温かくて美味しかった。
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