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ふと、顔を上げると、ふう、とミツキさんがマグカップを吹いていた。それだけの仕草だと言うのに、もう、何て言うか、可愛いが零れ落ちていた。目を見開いて、俺はその光景を目の奥に焼き付けようと思った。
途端に、大きな溜め息がミツキさんの口からは漏れる。
「ナオ、気持ちは分かるけど、少し、落ち着こうか?」
クッキーのような形のローテーブルにマグカップを置くと、ミツキさんは俺の頭を、ぽん、と撫でるように叩いた。
「ナオが可愛い物、大好きなのは、分かるけど……」
言われて頷き掛けて、は、とする。ミツキさん、今、何とおっしゃいましたか?
「まあ、僕もノリでここまで突き詰めちゃったからね。気持ちは、分かるよ」
ミツキさんは俺の太腿を撫でながら、優しく笑う。が、俺はそれどころじゃ無かった。
「おおお、俺は、べべべ、別に、か、か、可愛い物が好き、だなんて、そんな!!」
しどろもどろに声を出すと、ミツキさんは、ぴ、と親指と人差し指を拳銃のような形にして空気で俺を撃ち据えた。当然、撃たれた俺は、胸を押さえるしかなくて。この仕草がこんなにも似合う人、居るんだ!!
「はい、嘘は吐かない」
けれど、漏らされた言葉は驚く程冷たかったから、さーっ、と頬を冷や汗が伝う。ミツキさんに嫌われる。そう思うと、指先まで凍えるようだった。
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