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「僕が、しっかり、納得出来る答えを、ちゃんと言って!」  最早、恒例となっている、ナオの膝を叩く動作をしながら言うと、ナオは急に泣きそうな顔をした。 「だ、だって、本当に、俺は大した事、出来ませんから。……今は、ミツキさんも物珍しいだけで、その、俺なんて、その内、飽きられて、しまって……」  僕は箸を叩きつけるように置くと、ナオの方にしっかりと向き直り、その頬を叩くように両手で掴んだ。 「い、いった!」 「僕が、何だって!?」  ナオを睨み据える。びくん、と震え上がったナオは、僕から必死に目を逸らそうとするが、当然、それは許さない。 「僕が! 何だって?」  同じ台詞を繰り返す。僕の怒りをしっかりと感じ取ったのだろう、ナオはその三白眼気味の目を潤ませると、恐る恐る僕の目を見て来た。そのタイミングで、にっこり微笑んで遣る。 「ミツキさんは、俺じゃ無くても、良い人でしょ?」  僕の笑顔に力を得たのか、また妙な事を言い出した。苛立ちが募る。 「それって、裏を返せば、ナオが僕じゃ無くても良いって言っている訳?」  当然、険の有る言い方になるのは、仕方の無い事だった。ナオは、首を振ろうとして、僕に顔を掴まれている事に今更気付き、必死に言い張った。 「ま、まさか!! 俺は、ミツキさんじゃなきゃ、駄目です!!」 「じゃあ、僕もそうなるよね?」 「……み、ミツキさんは、すごい人だから。俺には勿体無さ過ぎます」  当然の答えを口にすると、一瞬、言い淀んだ後、また、ナオのどうしようもない卑下が始まった。まるで、自分を貶されているようで悲しくなる。僕は、有りの儘の今のナオが、こんなにも愛おしいと言うのに。
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