置き去り

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「風が吹いて来たから、今日はここまでにしよう」 「仕方ない。もう少しだったのにな」 「焦ることはない。明日には登頂出来るさ」 親友はなだめるように、言った。 もうすぐこの山を制覇出来る。 何ヶ月も前から登るルートを検討し、それに合わせてトレーニングも行ってきた。 世界でも有数の険しい山として知られ、数々の登山家がチャレンジしては夢破れてきた。 俺たちもこれまでに2度失敗している。 だが、今回は周到な準備をして望んでいる。 天候にも比較的恵まれ、もうその頂上は目の前にある。 「テントを張って、食事にしよう」 過酷な登山を何時間もしてきた後に食べる物が、心底染み渡る。 身体がエネルギーを欲していることを実感する。
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