ありがとう

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男の子はコップを持って手を伸ばす。 それをおばあちゃんは微笑みながら受け取った。 「お母さんが迎えに来たよ」 「・・・」 「また明日。おやすみ」 「・・・」 男の子は表情も変えず、言葉も発しない。 それでもおばあちゃんは、会うたびに声を掛け続けた。 来てくれるだけで、うれしかったからだった。 男の子は、話せないわけじゃなかった。 怒っているのでもなかった。 ただ、とても恥ずかしがり屋で、表情さえも作れず、無愛想になってしまっていた。 心の中では、いつも「ありがとう」と思っていた。 「おかえり」と言ってくれた時、「ただいま」と心の声が言っていた。 お菓子をくれること、寝ている時に毛布を掛けてくれたこと、テレビを占領してしまったこと。
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