いつの間にかに

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低いビルにある地下。 階段を降りて、部屋のドアをノックする男がいた。 「どうぞ」 中で待っていた相手に招き入れられ、男は椅子に腰掛けた。 「本当に私の望むように死ねるんですね?」 「お約束します。ですが、一応訳を聞かせて下さい」 「もう何もかも嫌になったんです。やること全部上手くいかないし、幸せも感じられない」 「ご自分の思った通りの人生を歩けていないと」 「才能のある人間はいいですよね。所詮、生まれ持ったもので、その後の生き方が決まるんですから」 「努力をしても、手に入らないものはあります」 「私はまさにそういう人間です。もうこの歳だ。これから挽回したり、一発逆転したりなんてこともない」
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