いつの間にかに

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「何歳からでもやり直したり、挑戦したり出来るなんてことは言われますが、実際にはそう簡単なことではないものですからね」 「希望の光なんてものは、私には見えません」 「暗闇しか?」 「地獄です」 「やり残したことはありませんか?」 「やってもやらなくても同じです。それによって、私の人生に一筋の光が灯るなんてこともないですから」 「この世に微塵も未練はないということで、よろしいですか?」 「ええ」 男は深く頷き、続けて尋ねた。 「恐怖なく死ねますか?」 「もちろんです」 相手は明瞭に答えた。 「私は死にたい。でも、死ぬ瞬間がものすごく怖い。これって、矛盾しているでしょうか?」 「安心してください。他の方も同じです」
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