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美夕の母が亡くなったあの時が、絶好の機会だった。
「ママは、あの双子に香月家の如何わしい過去を洗いざらい話してやったのよ。
美夕を、拒絶し、めちゃくちゃにしてやると思わせてやるような過去をね。
彼らはあの時容易く信じたわ。
あの子達の目に、美夕に対する憎悪の感情を見たと思った。
だから、後は〝本物の事実〟を知っている貴臣さえ綾香がものにすればと思っていたのだけど」
恵美子の話を真剣な表情で聞いていた綾香は首を横に振った。
「双子に、ママの話の効果はあまり見えない」
「そのようね」
溜息交じりに言った恵美子は、空を睨む思案顔のまま、静かに言った。
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