『抱いてください』

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 わたしが何故、香月の家から逃げなかったか。  逃げ出せない、という理由なんかじゃないんだ、って心の何処かで受け止めていた。  これは奢りかもしれないけれど。  わたしは、三人の兄達をそのままにして、香月の家から出て行くなんて、考えられなかった。  三人の兄達がそれぞれ抱える〝なにか〟を一緒に抱えていきたいって、感じ始めていたのだと思う。  その、兄達が抱える〝何か〟に、自分が大きく関わっていたなんて、知らなかったから。
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