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「美夕、もう大丈夫だ」
優しい声が、美夕の取り乱す心をゆっくりと抱いていく。
恐怖に晒されて硬く強張っていた心から少しずつ力が抜けていく感覚があった。
美夕はしゃくり上げながらそっと顔を上げ、楊を見上げた。
柔らかな色を浮かべる楊の瞳に見つめられて美夕はおずおずと言った。
「楊君、抱いてください」
楊の心がドキリと鳴った。
美夕の柔らかなピンク色の唇から、自らその言葉を零したのは初めてだったから。
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