5 命奪う少女

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 電柱の陰に隠れていた祟り神は慌ててついていく。闇夜でよかった。音をたてなければ心愛には気づかれないだろう。二人は近くの寺の境内に入っていった。  静まりかえった境内の中、柚月は振り返り心愛の方へ顔を向ける。そして、パーカーのポケットからナイフを取り出し、心愛の喉を切り裂いた。 「ああああああああ!!」  叫び声が境内に響く。血塗れのナイフが石畳の歩道の上に落ちる。 「何をしている!」  祟り神が心愛に駆け寄る。鮮血にまみれ、息も絶え絶えな状態だ。救急車を呼ばなければならない。祟り神は柚月を突き飛ばし、ポケットの中のスマホを奪い取った。急ぎ119番を押す。    苦しんでいる心愛の形相は凄まじい。憎しみのこもった目で柚月を見上げる。あの大人しくおどおどした面影は既にない。 「そうそう、そういう表情できるじゃない。」  柚月の、これまでに聞いたことがないほど優しい声が闇夜に響いた。
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