5 命奪う少女

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 心愛が救急車に搬送される様子を見届けた後、祟り神は柚月を連れて寺から逃げた。通報だけして後は境内の隅に隠れたのである。そのまま柚月を突き出すこともできたが、理由を聞かずにはいられない。ナイフを落としたままなのだから、いずれ警察は柚月にたどり着くだろう。そうなる前に、彼女の凶行の理由を聞きたかった。    柚月の実家たる神社。人気のない真っ暗な境内の中、祟り神の本体ともいえる置き石の前で、二人は正対する。 「お前の狙いは天野由華じゃなかったのか!」 「天野?誰それ?」 「あの文化祭でお前に絡んできた女だよ。」 「ああ、あの人・・・。どうして?」 「口喧嘩していただろう。」 「ああ、あっちが喧嘩売って来たからね。だから言い返しただけ。それで終わり。別にあの人に苛立ちとかなんて感じない。その辺にいる阿呆の一人とくらいしか。逆に聞きたいくらい。なんであなたはわざわざ私があの人を殺すとか思っていたのよ。」 「じゃあ、なぜ心愛をあんな目に?心愛には何も噛みつかれていないだろう。というか心愛よりも天野のほうがお前は嫌っているだろうが、どう見ても。」 「あなたは遠藤さんが随分お気に入りみたい。どうして?」 「お前もじゃないか。一緒に学校をサボって菓子とか食べて、文化祭とかカフェとか行って。まさしく友達じゃないか。何故その子をあんな目に?」 「知りたかったから。」 「知りたい?」
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