5 命奪う少女

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 柚月が孤立を恐れないのは、その能力の高さや意志の強さ故のためであろう。一人でも大概のことはこなせるし、決断もできる。好きなことであればどれほど反社会的な行動―小動物殺しや死体取集―でも平然と行う。嫌いな人間には全力で噛みつくし、噛みつくだけの胆力や行動力も持ち合わせている。  しかし、そんなに強い人間は滅多にいないのだ。だいたいは心愛のように、他人の顔色を窺って、集団からはみ出ないことを祈りながら日々を過ごすのだ。そして、はみ出してしまった者の成れの果てが自身だと祟り神は感じている。 「でも、最後にあの子は私を睨みつけた。きっと死にたくなかったのでしょう。」  柚月は静かに言った。自己を殺して他人を窺っていた心愛が、心底その感情を表現したのは柚月に喉を裂かれた、あの瞬間だったのかもしれない。
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