最終章 再び付き纏う祟り神

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最終章 再び付き纏う祟り神

 神社の境内は荒れ果てている。長い石段を登った先には鳥居があり、その先には本殿と社務所がある。そして本殿から少し離れたところに、注連縄が巻かれた置き石が置いてある。  雑草は伸び放題、本殿や社務所の塗装は剥げかかっているままである。人の気配は全くない。その中で、置き石のある場所だけは妙に綺麗である。定期的に誰かが手を入れているのだろうか、雑草は見当たらないし、石そのものも頻繁に磨き上げられているかのような輝きがある。  茶髪の青年が石段を登っている。茶髪に浅黒い肌という、いかにもチャラそうな容姿の青年は荒れ果てた神社にはミスマッチだ。しかし青年は慣れた様子で置き石のところまでたどり着いた。  青年は天を仰ぐ。  十五年前、ここの神社の神主の娘である中村柚月が中学校の頃の同級生を殺害した。  祟り神である男は、柚月を懲らしめようと彼女に付き纏っていたにもかかわらず、事件を止めることはできなかった。いや、もともと柚月を止めようとか殺人事件を防止しようとか殊勝な考えは持っていなかったのだけれど。
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