最終章 再び付き纏う祟り神

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 弱者の怨念から生まれた祟り神は、孤高の強者である柚月や、集団の強者である天野由華のような人間には特に愛着は抱かない。むしろ、誰かに従っていないと生きていけないような心愛のような存在に目がいってしまう。正直、柚月が天野を殺してくれたら、心愛の孤独は解消されるかもしれないとまで思っていた。クラスの仕切り役の天野が心愛を嫌っていたから彼女は孤立したのであり、天野がいなくなれば周りも彼女に話しかけるようになるのでは、と。  祟り神は再び天を仰ぐ。ふと、石段の方から足音がすることに気付いた。慌てて幽体に戻る。足音は小さく、おそらく子どもではないかと思われる。  帽子をかぶった少年が、鳥居をくぐった。背中のランドセルを見る限り、小学生なのだろう。五、六年生くらいか。ランドセルを背負ったまま、本殿の床に腰掛ける。そのまま涙を流し始めた。鼻をすする音だけが境内に響く。しばらく泣いた後、少年はいきなり立ち上がり、置き石に向けて走り出した。そして、思いっきり蹴飛ばした。 「どうしていつも俺ばっかり!皆が馬鹿にしてくる!女子は俺の方をみながらこそこそ言ってくるし!うざいんだよ!友達いねえとか服が汚いとか!全員死んでしまえ!先生だって味方になってくれない!何の役にも立ちやしない!むしろお前が空気読めとか孤立するなとか!じゃあ空気の読み方を学校で教えろよ!」
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