1 付き纏う祟り神

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 男が言うには、自分は疫病の犠牲者たちの怨念の塊が生んだ祟り神だという。祟り神が何故茶髪で浅黒いいかにもチャラそうな外見をしているのかというツッコミは置いておく。  これが、祟り神と柚月の出会いだった。  繁華街の外れでの裏路地で柚月は足を止めた。薄汚いビルの壁にはスプレーで書かれた卑猥な落書きが描かれており、年頃の真面目そうな少女が来るべき場所ではない。柚月は青いごみ箱の蓋を開けた。  蓋の中には、ネズミや猫の死骸がぎっしりと詰めてあった。中には腐りかけのものすらある。そのすべてが、喉を刃のようなもので掻っ切られて死んでいる。  祟り神は目を背ける。今はかりそめの肉体を持っているとはいえ、生理現象などほとんどないはずの神の額に汗が伝う。当然、暑さ故のものではない。そのごみ箱の中の惨状と、それを見つめる柚月のうっとりした表情におののいてである。  中村柚月はサイコパスだと、祟り神は確信している。
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