1 付き纏う祟り神

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 まず、学校ではあからさまに孤立している。いじめとかではない。人に関心のない柚月は友達を作らないからである。最低限の(例えば委員会とか)コミュニケーションだけやって、部活にも入らず授業が終わったらさっさと家へ帰る。  家族とも仲良くない。というか話さない。一緒にいるのは食事時で、後はずっと自室に引き籠っている。両親は気難しい娘に手を焼いていると近所では噂になっている。  讒言の呪詛の脅威は、讒言そのものではない。その結果起きる周囲からの孤立である。が、柚月にはこれは効かない。もともと孤立しているのだ。  祟り神は悩んだ。もう一つの呪詛に、病毒の呪詛がある。これは疫病を相手に感染させるというもので、祟り神が生まれた由来に基づくものである。ただし、疫病そのものが『流行って』しまうのである。柚月だけでなく、家族や学校の生徒たちにまで感染する可能性が高い。祟り神が罰を与えたいのは柚月個人であり、他の人々ではない。というか、柚月とて命を奪うほどのことをしたわけでもない。懲らしめるだけのつもりなのである。    が、ここで手を引くのも神としての沽券にかかわる。柚月とて超然とした部分はあるが、所詮人間である。しかも小娘だ。祟り神は柚月に憑りついた。憑りついたとしても特に何ができるわけではないが、彼女と共に過ごすことで弱みを握れるかもしれない。そこを突いてやろう、と考えた。  こうして、疫病に苦しめられ親しい者に捨てられた怨念から生まれた祟り神は、少女に付き纏うことになったのである。
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