「島」「車」「壊れた中学校」

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この島の反対側。今住む場所から車を走らせておよそ2時間の場所に、オレがかつて通った中学校があった。 今は島の人口減少により廃校となり、完全に放置されてしまっている。特に再利用の予定はないらしく、放置された校舎には所々ひび割れ、かつての校庭は荒れ野同然の酷いありさまだ。 オレはそんな壊れた中学校に今でも時々足を運ぶ。 今回は約2年ぶりの訪問だ。 久しぶりに中学校へ向かう道を車で走りながら、窓の外を流れる風景に思いを馳せる。 今走っている道はちょうどかつて通学に毎日通っていた道だ。その景色は懐かしいと同時に、記憶と齟齬のある部分もあり少し新鮮だ。 「こんなところだった」と符合する部分もあれば「こんなだったかな?」とがっかりするところもあり、逆に以前はまったく気づきもしなかった発見もすることもある。 開発とも無縁の田舎なので、子どもの頃とほとんど同じ光景のはずなのに、それでも違って見えるのは、きっとあの頃とは視点が異なるからだろう。 たぶん、かつてと今では見てる世界がまったく異なるのだ。 それがきっと成長と呼ばれるものの類いなのだろうけど、やっぱり少し寂しくもあった。 そして、そんな思いを抱きながら壊れた中学校へと到着する。 この中学もやはり見え方がだいぶ違う。全体的にとても小さく見える。 かつては大きな敷居に見えていた小さな校門を超えて敷地内へと入り、目指すのは校庭脇のケヤキの木だ。校庭も校舎も荒れ果てたこの中学校でも、この木だけはかつてとまったく同じ姿で佇んでいる。 その根元に歩み寄って、ただそこに立ち尽くす。 ここへ来るときはいつもこうして過ごすのだ。 ただ、特に考え事をするでもなく、このケヤキの木の下にボーと佇む。 思い出に浸りたいわけではないと思う。ここでの出来事はあまり思い出したい類いの話ではない。 それでも、度々ここを訪れるのはやはりそれだけ自分にとって大切な出来事だったからだろう。
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