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1、兄の告白
バタンと大袈裟なくらいに大きな音をたてて、魔石工房の重たい木の扉が開いた。
その時リデルは工房の一番奥で、作り上げたばかりの魔石をテーブルに並べているところだった。扉の開閉の衝撃が伝わって、小ぶりなサイズの魔石がざわつくように少しだけ揺れる。
何事? とリデルが扉の方へ視線を向けるのと、同僚たちが「あれ、ユーリス?」と声をあげるのは同時だった。
リデルと同じ漆黒の豊かな髪を無造作に後ろ一つにまとめ、眉目秀麗な男。二十五歳にしては大人びた色気をもつ兄・ユーリスである。
彼は十日程前から仲間とともに魔石を持って王都まで取引に行っていた。だいぶ予定よりも早い帰還だ。
「もう帰ってきたのか? 他のやつらは?」
一番近くにいた男が、魔石を磨く手を止めてユーリスに近寄った。彼はユーリスに続いて誰か入って来るのではと扉の方へ視線も向けたが、そこはしんと静まっている。
「ちょっと野暮用ができてな。俺だけ先に戻ってきたんだ」
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