163人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
そう思いながらユーリスがしげしげと彼女を見つめていると、また「ああっ!」と彼女は大声をあげた。そうして掛布をずらして自分の体を確認し、ついで腰ほどまである長い髪の毛を手ですくい……
「私のこと……女に見える?」
そう聞いてきた。
「……もちろん」
女性以外になんだと言うのか。ユーリスがうなずくと、彼女は「お兄……じゃない、シセ!?」と宙に向かって叫んだ。
「シセ?」
その名前がここで出て来るとは思わず、ユーリスは目を見開いた。
「君はシセの……となるとシアンもかな。あの二人の知り合い?」
「知り合いっていうか……その……」
どうにも歯切れが悪い。
彼女は視線を様々なところにさまよわせて、どうやら時間を稼いでいるようだ。そこに何かの匂いを感じて、ユーリスは切り込んだ。
「シアンとシセは、昨日俺と飲んでいたんだけれど。二人が無事に帰れたか知ってる?」
「え? ああ……うん……多分」
「多分?」
「ええと……ええ……」
おどおどしている彼女が、何をユーリスに隠しているのか。
少なくとも、ユーリスよりは事情を知っているようだ。ほんのすこしの糸口だとしても、ないよりは良い。
何を聞けば、答えてくれるだろうか。
それを考えているユーリスを、彼女はじっとその大きな目で見つめて、やがて「ごめんなさい!!」と頭を下げた。
「え?」
「ごめんなさい、ユーリス! 私、シアンなの」
最初のコメントを投稿しよう!