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本当は、男じゃなくて女なの!
突拍子もない叫びに、ユーリスは思考が停止した。
目の前の女性と、昨日一緒にいた少年の姿がまったく結びつかない。
確かにシアンも目は大きく可愛い顔立ちだったけれど、背格好がまるで違うし、髪の色も違う。少年特有のまだ薄っぺらい体つきだったシアンの姿を浮かべてみるが、目の前で肩を震わせる彼女から見て取れるのは、成熟しかかっているまろやかな体つきだった。
「……えーと……どういうことかな?」
穏やかな声で問い返したユーリスに安心したのか、彼女は「……ずっと私、男の子のフリをしてあなたと会っていたの。あなたに近づくにはそれしかないからって、シセが……」と震える声で伝えてきた。
「つまり……擬態の魔法を使っていたってこと?」
姿を一時的に変える魔法は、ユーリスも知っている。けれどそれは一種の幻覚を見せるようなもので、その範囲は狭いし、効果のある時間だって短い。
食事の間中、その効力が続くとは思えない。
つまり、もっと強力な魔法がかけられていたのだろう。
「……驚いたな」
ユーリスは素直にそう呟いた。
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