2、回想 ※ユーリス視点

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「これって……まさか……」  二人で顔を見合わせて、沈黙する。  シアンは見るからに顔色が悪くなっていった。  彼女のすがるような眼差しに、ユーリスは「いや……俺は……」と否定しかける。  けれど、記憶がまるでないだけに断定ができなかった。  ユーリスは、その見目の麗しさから女性に声をかけられることが多かった。けれどそれを柔らかく受け流す術は身につけている。  一夜限りの交わりの経験もなくはないが、それはもっと若かった頃の話。今そんなことをしようと思うことはなかった。 「……ダメ……ユーリス、早くここを出て」  突然、シアンは決意した声でそう告げた。その顔色は真っ白だったけれど、目には強い光が宿っている。妙な迫力と威圧感のある目だった。 「……シアン?」 「こんなつもりじゃなかった。……たった一度……長い時間、おしゃべりがしたかっただけなの……」  いつのまにか太陽が昇り始め、室内はすこしずつ明るくなっていた。そこで見るシアンの髪の色は、透き通るような亜麻色。腰ほどまでにある豊かな髪が、朝日を受けてきらめいた。そして彼女の目いっぱいにたまった涙が、頬へとこぼれ落ちる。  その様子を、ユーリスはまるで絵画でも見ているかのような気分で見守った。 「ごめんなさい、ユーリス……」       
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