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か細い声を出し体を震わせるシアンを放ってはおけず、ユーリスが歩み寄ろうとすると、「来ないで!」とシアンは鋭い声で拒絶した。
「これ以上触れたら……あなたの罪が増えるだけ」
「罪?」
ユーリスのいぶかしむような視線を受けて、シアンは青い顔でうなずく。
「私の本当の名は、シンシア。……シンシア・ヴォン・エマ」
その名前は、世情に疎いユーリスでもピンときた。
この王都の中心に位置するヴォン城に座す、アンリ・ヴォン・エマ国王。その国王の一番最初の姫君の名前だったから。
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