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目が痛くて開けられない。リデルが両手で目を覆った瞬間、力強い腕に引かれた。ユーリスが自分を守るように、その光からかばうように、抱きしめてくる。
直後、低く轟く衝突音とともに地面が揺れた。
「……っ!」
足元がぐらつくも、力強い腕に支えられて倒れることは阻止できた。
数秒の後にまぶたの向こうの眩しさもおさまり、ようやくリデルが目を開けてあたりを確認すると……そこにいたのはあの黒い鳥ではなく、少年だった。深緑色のマントに身を包み、身長はリデルと同じくらい。深くかぶったフードから一筋、亜麻色の髪が見え隠れしている。
「探したよ、ユーリス」
春の初めにさえずる鳥のようなかわいらしい声だった。そしてフードをぱさりと落とした先の素顔は、その声に見合うようなあどけない少年のもの。
けれど、リデルの胸の中では警鐘が鳴り響いていた。それはユーリスも同じだったのだろう。いまだリデルを離そうとはせず、腕の中に閉じ込めている。
「……シセ……」
「……この子が?」
シンシア王女と行動をともにしていたという少年。話で聞いていた限りでは、人なつこくて明るい少年だと思っていた。けれど……。
「ひどいなぁ。シンシアを置き去りにするなんて」
微笑みながらはなたれた言葉も、親しみがこもった声も、どこか空々しい。自然と警戒心を抱かせる、底の見えない少年だった。
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