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身じろぎしたリデルに、ユーリスは一度微笑みかける。
大丈夫、と唇だけを動かすと、ユーリスはその腕を離し、リデルを自分の背に隠すようにして一歩前に出た。
「……驚いたよ。こんなに禍々しい魔力を、よく今まで隠せていたな」
「秘密主義ってよく言われるよ」
シセからたちのぼる魔力は、彼自身がまとっているマントのような深く暗い色をしていた。けぶる炎のようにそれはゆらめき、少しずつこの森の空気を侵食していくような錯覚に陥る。
「それで、ユーリス」
シセは微笑みを崩さぬまま、一歩ユーリスに近づいた。その距離はあと五歩くらいといったところ。
「昨日のことは覚えてる?」
「……いや何も」
「そっか。……でも、もう君は立派な大罪人に仕立てられてるよ」
びくり、とユーリスの肩が大きく震えた。
同じように、リデルの背筋にも冷たいものが走った。そっとユーリスの背から顔を出して様子を伺うと、シセは穏やかな表情のままユーリスを見つめている。けれどユーリスが無言なのを見て、彼はさらに続ける。
「大人ってほんとひどいよね。君に全てを押し付けちゃってさ」
「え、ど、どういうこと!?」
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