3、シセ

6/6
163人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「僕は君を助けに来たんだよ、ユーリス」  言うなり、シセの魔力が膨れ上がった。   「嫁入り前の王女が傷物になったなんて、公にはできない。だから国王は『王の鉤爪(かぎづめ)』に君の暗殺を命じた」    歌うように紡がれる言葉にリデルは卒倒しそうになった。  いくらなんでもひどすぎる。冤罪だ。  ぎゅっとユーリスの外套を握り締めると、ふわりと大きな手が頭に乗った。その手はそのままリデルの髪をなで、リデルの肩を押した。離れろ、という合図だ。  見上げた先のユーリスの表情はかたいものだったけれど、リデルのように取り乱してはいなかった。 「そこまで知ってるなんて、随分情報通なんだな」  ふっと口の端をあげるユーリスと同じ表情を返しながら、シセは「僕も鉤爪の一人だからね」と不敵に笑う。 「……だと思ったよ」  その言葉とともに、ユーリスはベルトにさしてある短剣を抜いた。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!