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「僕は君を助けに来たんだよ、ユーリス」
言うなり、シセの魔力が膨れ上がった。
「嫁入り前の王女が傷物になったなんて、公にはできない。だから国王は『王の鉤爪』に君の暗殺を命じた」
歌うように紡がれる言葉にリデルは卒倒しそうになった。
いくらなんでもひどすぎる。冤罪だ。
ぎゅっとユーリスの外套を握り締めると、ふわりと大きな手が頭に乗った。その手はそのままリデルの髪をなで、リデルの肩を押した。離れろ、という合図だ。
見上げた先のユーリスの表情はかたいものだったけれど、リデルのように取り乱してはいなかった。
「そこまで知ってるなんて、随分情報通なんだな」
ふっと口の端をあげるユーリスと同じ表情を返しながら、シセは「僕も鉤爪の一人だからね」と不敵に笑う。
「……だと思ったよ」
その言葉とともに、ユーリスはベルトにさしてある短剣を抜いた。
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