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ユーリスが行き先に選んだのは、町外れの森だった。
まだ年若の常緑樹が、まるで旅人を迎え入れるかのように間隔をあけて生い茂っている。けれどその優しい雰囲気に騙されて中に入ったが最後、奥にいくほどに樹齢深い木々が行く手を遮り、獰猛な野生動物たちが主として居座る森だった。
「とりあえず中で話そう」
ユーリスはリデルを解放すると、落ちた小枝を踏みしめながら森の中へと踏み込んでいく。
そうしてすぐに、風と土の精霊たちがその縄張りを主張するようにその魔力を惜しげも無く撒き散らし、葉のこすれる音は突然の侵入者を警戒するかのようにざわめいた。
けれどユーリスもリデルも意に介さない。
いつものことだからだ。
この森は、何も知らない旅人にとっては恐怖の対象となる場所であっても、ユーリスとリデルにとっては庭のようなものだった。その身に宿る潜在魔力の高い2人にとっては、精霊たちとコミュニケーションをとることは容易く、彼らとはいい関係を構築しているからだ。
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