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あたりを見れば、ベッドの下には昨晩自分が着ていた衣服が散乱し、おそらく彼女のものを思われるものも同じ状態である。
「うーん……これは、あれか」
記憶はないが、自分は彼女を抱いたのだろう。
それが、この状況から導き出される一番高い可能性だった。
二人用のベッド以外にはクローゼットと小さなテーブル一つ置かれた個室だった。ユーリスは、隊商のメンバーとともに四人部屋に泊まるはずだったから、誰かしらが手配してここまで運んできたのだろう。
それは一体誰なのか。
記憶を辿ろうとしても、まるでぷつりと糸が切れたかのように昨晩の映像は切れている。
シアンとシセと三人で乾杯をして、エールを煽ったところで終わりだ。
ユーリスは酒に強い体質で、エール一杯で酔い潰れることなんてありえない。
だとすると何か薬が混ぜられていたことが考えられ、次に一緒に飲んでいたはずのシアンとシセの行方が気になった。
彼らの飲み物にも同じようなものが混ざっていたとしたら……。
胸騒ぎが喉元までせりあがってきて、ユーリスは咳払いでそれをごまかした。とりあえず服を着なくては。ユーリスはベッドから降り立ち、手早くチュニックに袖を通して、ズボンまで着用する。
そうしたところで、彼女の方も「んん……」と身じろぎをし、うっすらと目を開けた。
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