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3、シセ
「その後はまあ……お前の想像通りだ」
「……その部屋を出て、すぐにこっちに戻って来た?」
リデルの言葉に、ユーリスは複雑な表情でうなずいた。
「本当はシアンを先に帰したかったんだが、全然説得に応じてくれなくてな。俺が先に部屋から出たんだ」
「……誰にも、見られてない?」
「おそらくは」
彼の話を聞いている間、リデルの手は細かく震えていた。
得体の知れない不安が体にまとわりついて、今はそれはハッキリとした感情となってリデルを覆っている。
「お兄ちゃん……」
わさわさと大きく木々が揺れた。リデルとユーリスのまわりを飛んでいる風の精霊が、落ち着かない様子だ。世俗の話などに興味はない精霊たちは、おそらく今リデルが発している不安定な魔力が気になっているのだろう。
リデル自身、内にこもっている魔力が、感情に呼応するようにざわついていることには気づいていた。魔力量が多いとこういう時に不便だ。感情に魔力が揺さぶられる。
あばれそうになる内側をおさえつけるように、リデルは拳を握り力を込めた。
「……悪いな、リデル」
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