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国王夫妻に次の男の子が生まれたら、その子を第一王子とすればいい。
その為にはセレの存在は邪魔だ。
『殺してしまおう』という極論まで出た。
しかし、セレの両親、つまり国王と王妃はそれを許さなかった。彼等は我が子が愛おしかったのだ。
『存在を隠し、人目に付かぬ場所で暮らせば良い』
結局、そういう事に決まった。
セレは産まれて1ヶ月も経たぬうちに、国の南西部の森にある離宮へと移された。
それでも、母親は少なくとも月に一度は『お忍び』で離宮のセレに会いに来ていた。
だが、滞在時間はわずかだった。
ごく幼い頃のセレは、母が帰る時には泣いたものだった。
しかし、自分の立ち場を理解してからは、あまり感情を出さなくなった。特に『悲しさ、寂しさ』を表す事はしなくなった。
自分のその感情が母を辛くさせる事を感じたからだ。
大好きな母に、自分のせいで「辛さ」など絶対に与えたくなかった。
いつしか、セレは表情の乏しい子供になっていった。
そんなセレを一番近くで見ていたのは、教育係で主治医でもあるヴァシュロークという人物だった。
国王の従兄弟で、やや風変わりなところがあった。
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