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波打つ大地を、巨大な魔獣の足で踏み鎮めるかのような作用を発揮する。
その効力の範囲も広大だ。
発動と同時に、セレの胸には激痛が走った。心臓が悲鳴を上げている。
「まだだ…もう少し…」
全身が酸素不足となり、意識が遠のく。
…あと1分…保て!…
セレの瞳に最後に映ったのは、窓から見えるロストークの美しい山並みだった。
心からも身体からも力が抜けてゆく…
だが、大地の振動を抑えつけた手応えは感じた。
…もう大丈夫だ…王都も運河も…町並みも…父上、母上、ヤール…
セレが崩れ落ちる瞬間に、庭師のジャルドが部屋に飛び込んで来た。
セレの
「ポーダ・ブレニエ!」
と叫ぶ声が聞こえたからだ。それがどんな魔法なのかは彼には分からなかったが、嫌な予感がした。
「セレ様!」
倒れかかったセレの身体を抱きとめた。
「…どうせ長くは保たない命だ…良かった…」
そう小さく呟いてセレは意識を失った。
みるみる血の気を失って行くセレを見て、庭師は只事ではないと感じた。
セレをベッドに横たえるとヴァシュロークの元へと走った。
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