第1章 風の中

4/17
前へ
/49ページ
次へ
王家であるランディールの一族には緑の瞳の持ち主が多かったが、ヴァシュロークは髪も瞳も金色だった。 母方の血が強く現れたのだろう。 ランディールの家系は強力な魔法使いも多かった。 その中でもヴァシュロークは格別だった。 魔法は大別して、地、水、火、風、の四つがある。大方の魔法使いはどれか一種しか使えない。 二種を使えれば「強力な魔法使い」三種を使えれば「大魔法使い」と呼ばれる。 ヴァシュロークは四種、全てを使えた。 しかも、その内の「地」と「火」に関しては最高魔法まで発動する事ができ「偉大な魔法使い」と呼ばれていた。 勉学にも熱心で、知識も豊かだった。 18才の成人の儀の頃には既に国外にまで名が響いていた。 セレが産まれた時に取り上げたのは、そのヴァシュロークだ。 誕生の瞬間に立ち会った数人は、セレの産ぶ声が聞こえなかったので、死産だと思った。 産まれる前から心音がおかしいのは分かっていたし、ヴァシュロークも『もしかしたら無事に産まれて来られないかもしれない』と心配はしていた。 しかし、母であるレイムと、取り上げたヴァシュロークにだけは微かにセレの泣き声が聞こえた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加