44人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
両親と弟の顔が浮かんだ。
…もう会う事は許されないのだな…
涙が湧いて来た。
その時
「セレ?あなたはセレシュヤーデでしょ?」
背後から女性の声がした。
振り向くと、長い黒髪に黒くて大きな瞳の可愛らしい少女がいた。
一粒だけ涙が溢れたのを見られてしまった。
少女は驚いて
「どうしたの?悲しいの?」
と訊いてきた。
セレは慌てて涙を指で拭き
「いや、何でもない。」
と答えた。そして
「どうして俺の名を知っている?君は?」
と訊いた。
もう涙は引いていた。自分を『俺』と言った事に驚いた。
「私はピアリ。ヴァシュローク様から聞いていたの。私の父はヴァシュローク様の弟子だったのよ。」
「ヴァッシュ様の弟子?では魔法使いなのか?それにここは何処なんだ?」
自分を知っている人間がいる事に少し安心した。
続け様に質問してしまったが、ピアリは嫌な顔をせずに答えてくれた。
「父は…魔法医と言った方がいいわね。詳しい事は父から話してもらうわ。ヴァシュローク様から頼まれている事もあるし…とにかく家に来て。」
ピアリの手招きにセレはついて行った。
最初のコメントを投稿しよう!