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『この子は生きる』
レイムとヴァシュロークはそう感じた。
セレの生命力を高める為に自分の魔力を直接流し込んだ。
産まれたての赤子が相手だ。魔力の強さ、波動、量など、少しでも身体の許容範囲を超えたら、即「死」に繋がる。
魔法医の権威でもあったヴァシュロークの経験と技術が無かったら、産まれたその日の内にセレは命終していたかもしれない。
力強い産ぶ声こそ上げなかったが、こうしてちゃんと自分で呼吸を始めたセレに理屈抜きの健気さを感じ、ヴァシュロークは『可愛い』と思った。
両親である国王夫妻と変わらぬ愛情で『この子に出来るだけの事をしてあげよう』と、この瞬間に決めた。
そして自分からセレの教育係を買って出た。
セレが離宮に移されてからも、足繁く通っては面倒を見た。
セレにとってはヴァシュロークは兄であり父であった。
だから2才になった頃、乳母から本当の父親を紹介された時にはなかなか受け入れられず、王が側に来ても警戒するだけだった。
ヴァシュロークは、従兄弟である国王、オーリに
「もっとセレに会いに行ってやれ」
と口癖の様に言っていた。
だが、その頃の王は本当に多忙だった。
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