第五章・猛毒の地底湖

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「回復魔法、再発動までもう少しです……!」 「いや……ここでヒーリアの魔力を消耗させすぎるわけにはいかない。それに、これを繰り返していたら、また敵が現れてジリ貧だ」 「それなら、一気に倒すしかないよね! 新しい炎の翼の出番だよ!」 フェンは足を大きく開くと、剣を前に構える。 「奥義、『陽炎飛翔爛』! いっけー!!」 そして剣と脚から炎を後ろへ噴出しながら、不死鳥のような姿となってランサーペントへ高速で突撃する。 「ぐうぅっ! 体力を奪われるのはそのままかっ……でも、制御できるようになった今なら……!」 制御できるようになったこの技は、技の発動に体力を消費するが、命中すれば敵から体力を吸収できるという特徴を得た。 すなわち、体力の低いフェンにとっては、外してしまえば一気にピンチだが、当たれば少ない吸収量でも十分全快できるというハイリスク・ハイリターンな技であった。 炎の鳥はランサーペントを貫き、炎属性に弱い地属性であることもあって、一撃で倒すことができた。 「こっちはオッケー!」 飛びすぎることもなく、華麗に着地するフェン。 しかしエメドラドがその間じっとしているはずもなかった。飛び上がりながら緑色の石を何個も形成すると、一気にヒーリアへ飛ばす。 「魔法なら、俺が防ぐ!」 しかし魔法防御は解除途中ならまだ効果は残っている。カイトが前へ出て、緑色の石を霧散させる。 だがすかさずエメドラドは着地と同時に地面を尻尾で押し、跳ね上がるようにしてカイトを飛び越え、ヒーリアに牙で襲いかかる。 「ヒーリアちゃんを倒されたらやばいんじゃ……!?」 ヒーリアは護身や吹き飛ばし技などを持っているが、今それを放てばすぐ目の前のカイトにも命中してしまう。かといってフェンは遠すぎるし、マグナの技も攻撃範囲の狭いものがないため二人を巻き込みかねない。 今のカイトを毒水に突き落とすのは危険だ。ヒーリアは優しい性格故に、その犠牲を良しとはしなかった。 ヒーリアを倒されることは、毒をすぐに回復する手段を失うことを意味する。仮にヒーリアが耐えたとしても、魔力の消耗はそれほど安いものではない。 ただし、ただ攻撃されようとしているわけでもない。 彼女は支援する能力が高い。それはつまり、支援が必要かどうかを判断する能力も高いということ。 そのため、彼女は後ろにいる小さな少女のことを信じ、何もしなかった。 「『ソナーストーン』」 ヒーリアの後ろから、澄んだ高い金属音が鳴り、洞窟内に響き渡る。 エメドラドはその音に気を取られ、ヒーリアを飛び越してそちらへ噛みつきに行った。しかし、そこにはただ地面があるだけ。 「『ストーンハンマー』」 そしてその音を鳴らした張本人は、ゆっくりと岩の弾丸を放ち、エメドラドを撃破した。 「ありがとう、マグナちゃん」 「ヒーリアさんこそ、完璧な判断でした」 言葉を交わす余裕もない一瞬に起きた二人のチームワークにより、カイトもヒーリアも傷付かずに済んだのだった。
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