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「まさか『ソナーストーン』に救われるとはな」
マグナの用いた『ソナーストーン』は本来、小さな鉱石を召喚し、それを床に向けて落とすことで音を反響させて、その音波から大まかな地形を把握するという地属性の支援魔法である。
先程はその音波を利用し、魔物の注意を引いたのだった。
「魚は聴力が鋭いことが多いんです。リーラ地底湖は一見明るいですが、彼らの普段住んでいる毒水の中は視界が悪いので、聴力が一際鋭い可能性が高いと判断しました」
「嗅覚は、ラフレイクの甘い匂いやらで信頼性に欠けるだろうからな。リーラ地底湖の魔物の生態情報としてカンパニーに報告しても良いかもしれない……っと」
「こらこら。仕事熱心なのはいいけどさ、一旦休みなさいな」
カイトがふらつく。それを駆け寄ってきたフェンが受け止めた。
「『イノセントストーム』!」
フェンが駆け寄ってきたのを確認して、ヒーリアが詠唱を完了し、癒やしの竜巻を発生させた。
「助かった……まだまだだな、俺も」
カイトはそう言うが、実際のところは、カイトの防御力が毒の前では意味がないこと、また想定以上に魔法を使う敵が多かったせいである。
カイトが未熟というより、相性が悪かっただけと言っても良いだろう。
「対してフェンはよくやってくれた」
カイトとは違い、フェンはまだ未熟だが、相性は抜群に良いと言って良かった。
未熟であったとしても、適正により能力差を埋める活躍をすることができる場面もあるのだ。
ルフトリーゼ然り、今回の件然り。戦闘能力が低いからといって、それだけで活躍できないというわけではないのだと、フェンは新たに知ったのだった。
「なんだそれ、照れくさいなー。というか、帰るまでが遠足……もといクエストだから! 気が早い気が早い!」
「……お前さんも立派な総務課になったのかもしれないな」
「え。いや、それは嬉しくないかなぁ……」
苦笑いする採取課志望のフェンに対し、癒やしの竜巻の中で笑い合う三人なのだった。
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