第一章・曖昧な職員たち

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「フェンさん、危ない!」 しかし、相手はもちろんのんびりと見ているわけではなかった。 ソルトコボルトは物理攻撃が効かないと分かり、即座に魔法で水の塊を放ってきたのだ。 「うあああっ!!」 水の塊はフェンのがら空きの腹部にぶつかると炸裂するように大きな衝撃を与え、派手な水飛沫が上がると共にフェンは三回転ほどしながらマグナの方へ吹き飛ばされていた。 魔法防御力の強化は受けていなかったフェンは、元々打たれ弱い上に本人が炎属性であることも相まって水魔法で大ダメージを受けてしまったのだ。 「う……うぅ……っ」 お腹を抑えうずくまってしまうフェン。そこへすかさず追撃に詠唱を開始するコボルト。その判断の速さはコボルトの積んだ経験の多さを物語っていた。 「やば……これ、まずいかも……っ」 「━━間に合った、『キャニオンウォール』!」 しかし水の塊が再び放たれる直前、フェンとコボルトの間に、横に広い巨大な岩の壁が作り出された。それは地属性らしく防御力に優れた壁であり、分解術にも耐性がある耐久向けの防御魔法。 マグナはこうなることを見越して防御魔法を詠唱していたのだ。 コボルトが回り込もうにも、巣穴の出口にちょうど発生したため他の出口がない限り出られず不可能。この防御魔法もやがては消えてしまうため閉じ込めるということはできないが、効果時間は長い。 「回復魔法は使えますか?」 「う……うん……っ━━『ホットファイア』っ」 マグナがそう問いかけると、フェンの詠唱の後、熱い炎がフェンを燃やすように発生する。すると、フェンは炎に焼かれながらゆらりと立ち上がった。 不死鳥の炎。彼女の炎の回復魔法は、癒しの炎で対象を焼いて回復する独自のものだった。
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