第一章・曖昧な職員たち

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「……うん、残りの個体はいないね!」 その後、他にコボルトがいないことを確認し、元の巣穴前へ戻ってきた二人。 「それにしても、マグナちゃんだけで十分だったような……」 「簡単な依頼ですから。でも、もし一人だったら、あの強力な個体で苦戦していたと思いますよ。だから、ありがとうございます。えへへ」 「そ、そっか? それなら良かったかなー」 マグナの純粋な笑顔でそう言われると、フェンも悪い気はしなかった。マグナはお世辞などは言わず、本心からそう思っているのだとフェンは知っていた。 「そしたら、薬草を摘みましょうか」 「待ってましたー!」 フェンは待望の最も採取課らしいと思う仕事がようやくまたできたことに感激しながら、嬉しそうに両手をあげてきゃっきゃと跳び跳ねると、すぐに薬草にかじりつかんとする勢いで駆けていく。 マグナも笑顔でそれに続いた。 こうして、大量の薬草と、おまけに大量の塩をゲットした二人。 フェンは記憶力は良くないため、薬草のデータを熊さんリュックの中から取り出して摘んでいた。マグナは逆に記憶力は非常に良く復習も怠らないため、見るだけで判断して手早く摘んでいた。 どちらも薬草以外の植物や病気の薬草を間違えて摘んでしまうこともなく、採取課として文句のない仕事をこなすことができた。 フェンは決して優秀な能力は持たないが、真面目にやれば努力して差を埋められるという点から見れば優秀な職員なのだ。
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