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「あの子は気にしてないみたいだし、あの子の親が心配しているならまだしも、似たような子の捜索依頼もないわけだから。普通の生活ができるなら、それでいいと思う」
「ま、お前さんがそう言うならいいんじゃないかい。けど、お前さんが拾ったことはマグナは知らないようだが……どうしてだい?」
「束縛したくはないからねぇ。それに、過去を知ることが良いこととは━━」
「……ヒーリアさん、さようなら……フェンさん、お待たせしてごめんなさい……あれ? もしかしてお話途中でしたか?」
「━━いや、なんでもないよ。ね、カイトさん」
「応。ちょうど話が終わったところさ。今から帰りかい?」
「はい。フェンさん、今日はありがとうございました。途中まで一緒に帰りませんか?」
「どういたしまして。こちらこそありがとー。あ、でもね、今日は帰らないよ。メリシアちゃんにボウガン教えてもらうからね!」
「ふふ、もう夜ですしご迷惑なのでは?」
「お前さんは、全く……」
カイトは肩を竦め、マグナがそれを見てくすりと笑う。フェンもまた、楽しそうなマグナを見て笑顔になった。
戦闘課だが採取課志望のマグナ、総務課だが採取課志望のフェン、総務課だが戦闘課の仕事の方が好きなカイト。
曖昧な職員たちは、次の日にはまたそれぞれの本来の仕事に戻るのだろう。
それでも、やりたいことをやることはとても楽しいのだと、今日1日でそれぞれ思った。
「マグナちゃんが、このままやりたいことを自由にできたら良いのにな」
そしてマグナを見守るフェンは、そう呟いたのだった。
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