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第二章・日常は喫茶店から
数日後。カイトの奢りで近くの喫茶店へやってきたのだが━━
「まさか急な仕事が入って、カイトさんがいなくなっちゃうとはぁ」
お金だけ置いて立ち去ってしまったカイト。今日はもう戻ってこられないらしく、マグナとフェンはそのまま喫茶店へ置き去りにされる形となった。
「総務課も大変なんだと思います」
「あたしも総務課なんだけどぉ?」
「ふふ、冗談です」
ぷくぅと頬を膨らませるフェンであったが、その表情は嬉しそうである。総務課扱いされないのが冗談でも嬉しいというのもあるが、フェンは人と話すこと自体がそもそも大好きだった。
「お待たせしました」
そうしている内に、フェンの好きなリンゴジュースが2つやってくる。マグナも同じものを頼んでいた。
「ありがとうございます」
「ごゆっくり」
受けとると、店員はそう言って離れていく。
「ちゅーちゅー。おいしいね~、リンゴジュースは良いものだあー」
「ふふ、そうですね」
ちゅーちゅーと擬音をわざわざ口に出しながら飲むという実に自由なフェンに対し、行儀よくちょこんと座りながら楽しそうに微笑むマグナ。
それはとても平和な光景であった。端から見れば二人は仲の良い姉妹にすら見えるだろう。
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