第二章・日常は喫茶店から

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そんな平和な光景だが、現在二人のいる喫茶店は、実はカンパニー職員たちにとってはただの喫茶店ではない。 例えば…… 「そういや兄貴、知ってるかい?」 マグナたちの近くのテーブルに向かい合う形で座っていた二人の男が話し始める。 「んん? なにがだ?」 「これはあるカンパニー職員の話だ……」 弟と思われる方が声を落とし、テーブルに組んでいた腕を置くように体重をかける。木製のテーブルは小さく軋んだ音を立てた。 「……ほう?」 「それはバラ色のロングヘアに緑の瞳の美麗な女性。上品な佇まいだが、小さな可愛らしい見た目にそぐわぬ凛としたプライドの高さ……それを現すならばそう、まさに薔薇の花……」 うっとりとしたように言う弟。 「おお!」 それに興奮ぎみに食い付く兄。弟と同じ動作でテーブルに体重をかけ、二人分の体重でテーブルは大きく軋む。 (…………) ロゼットさんの話だ、とマグナはすぐに気付く。 同じく気づいたフェンは、全くその通りだ、と頷く。フェンはその噂の対象である少女、ロゼット・シャトワールのことが陰ながら好きである。 ロゼットは、採取課の職員であり、お嬢様らしい優雅さと高飛車な性格を持っている人物だった。 「しかし、彼女にはある秘密があるんだ」 「……秘密……?」 急に様子の変わった弟に対し、兄も不安そうな顔をする。 「ああ。実は彼女の近くにいると……常に謎の気配を感じるんだそうだ」 「……気配?」 「ああ。気配を読み取るのがとても上手い奴でもほぼ感じ取れないほどだが……確かに『いる』らしい……!」 「マジかよ! やっぱ綺麗な薔薇には棘があるってことなのか……こえぇ……ってかおい、怪談はやめてくれよ! 苦手なんだってば!」 本気で怖がっている兄。 (…………) 彼らにとっては怪談だったらしいが、マグナはこの噂の正体を知っていた。 (これ、ロゼットさんの使用人さんや執事さんたちのことなのでは……!?)
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