第二章・日常は喫茶店から

7/22

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「穴が空いているところもあるので、気を付けてくださいね」 「おお……船に乗るのって、久しぶりだなー」 フェンは船の揺れを感じて、そう呟く。 「そういえば、フェンさんはハーフェン出身でしたね」 「そうそう! よく親の漁を手伝うために、ちょうどこんな船で海に出たなー!」 フェンは嬉しそうに笑顔で語ると、近くの壁をそっと撫でる。 ハーフェンとは、南洋に浮かぶ小さな島国のことである。温暖で漁業が盛んであり、ツェントルムとの貿易もよく行われている、比較的馴染みやすい国だった。 以前のソルトコボルトも、本来はハーフェンに生息している魔物である。 「どうしたんですか?」 「うーん、風化して崩れちゃったのかな……同じような船なら、ここに石のプレートがあるんだよ。誰々の船だーって」 フェンの撫でている場所には、石の欠片が壁にめり込むように刺さっていたが、そう言われると、欠けたプレートの一部に見えなくもなかった。 「なるほど。これはこの辺りにはない材質ですね。近くに欠片があるかもしれません。探してみます……」 マグナがフェンに代わり石を撫でながら静かに目をつぶる。すると、海の中や足元にあった近くの石が、ゆっくりと近くに集まってきた。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加