第二章・日常は喫茶店から

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照らされた室内には、朽ちたベッドが1つと、大きめの木箱がいくつか無造作に置いてあった。 「あれは……!」 フェンは、木箱の陰から陰へ移動する敵らしき姿を一瞬だけ見ることができた。 「ゴブリン系のモンスター……っぽい」 フェンは様子をうかがうが、ゴブリンも警戒しているらしく、一向に出てくる気配はない。しかし、敵意だけは強く感じられた。 「でも、見えてさえいれば大丈夫なはず。避けながらマグナを回復して……っ!?」 フェンは詠唱を開始しようとしたが、その瞬間に敵意が間近に迫るのを感じた。あまりの速さに避けることに集中せざるをえず、詠唱することができなかった。 なんとか避けきったが、そのときにはもう別の木箱の陰に隠れるゴブリンの姿が僅かに見えただけだった。これでは、部屋が見えていても何も意味がない。 「速すぎて、あたしじゃ避けるので精一杯だよ。どうすれば……!」 ゴブリンは、フェンが側で警戒している状態で無理にマグナにトドメを刺すより、まず先にフェンから仕留めた方が良いと考えているのだろう。 しかしマグナの側を離れて攻撃しにいったら、入れ違いでマグナへ攻撃されたら助けられないかもしれない。 かといって、マグナを抱えて逃げようとしたとしても、そもそも速度面で負けているため逃げ切れず、フェンは背後からやられてしまうだろう。 かなり厳しい状況と強敵を前に、フェンは焦りと恐怖から呼吸が速くなるのを感じていた。
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