第二章・日常は喫茶店から

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「敵はゴブリン型の素早い魔物。物陰から攻撃してきて、攻撃が失敗したら即座にまた隠れる。凄く速くて、あたしじゃ避けることしかできなかった」 敵の詳細を説明するフェン。ゴブリンは警戒している状態の相手が複数いては厳しいと判断したのか、攻撃を仕掛けてこない。 「わかった。でも、オレもそこまで速いわけではねぇな……そうだ。この船、確か壊してもいいんだろ?」 「いいけど……どうするの?」 「よし。『烈火衝』!」 船後方の扉のすぐ側にいるアーディは、部屋の中心……つまり船の中心に向かって両手剣を叩きつけ、前方に炎の衝撃波を放った。 元々朽ちかけていたため、フェンたちがいる場所を除き、部屋の障害物全てが吹き飛んでいた。今度こそ本物の炎が付き、部屋は熱気に包まれる。 しかし、これで倒したわけではない。遠いところで様子見していたらしく、衝撃波が届く前に回避されて、ダメージは与えられなかったようだ。 しかし、アーディの狙いは達成していた。 「これでもう隠れる場所はねぇ……出てこい!」 障害物が吹き飛んだことで、炎の中には物陰を失ったゴブリンが一匹。焼けて苦しそうにしながらも、短剣を手に、敵意を宿してアーディを見据えていた。 視線が合う。一瞬の静寂。揺らめく赤の中、時が止まったような感覚。
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